■ 『学齢』の解説
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学齢(がくれい)とは学校に就学して教育を受けることが適切とされる年齢のことである。日本では、満6歳の誕生日以後の最初の4月1日から9年間(満15歳に達した日以後の最初の3月31日まで)が該当する。戦後の日本においては義務教育の対象年齢のことを学齢と称するため、日本国籍者についての学齢期と義務教育期は同一のものを指している。義務教育と関係が深い概念なので、より深く理解するには「義務教育」の記事も参照。
学齢の期間
日本では学校教育法第16条で日本国民である保護者に対し、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負わせている。その学齢は同法第17条で定めており、原則として子の満6歳の誕生日以後における最初の学年の初め(最初の4月1日)から6年間を小学校等に、その後の3年間を中学校等に就学させる義務を負う。この9年間を「学齢期」と呼ぶ。
早生まれ
学齢期は、満6歳の誕生日以後における最初の学年の初め(最初の4月1日)から始まるため、誕生日が1月1日から4月1日までの間にある者は、前年の4月2日以降に生まれた者と同じ学年に組み入れられることになり、同じ年に生まれた者の中では1学年早い。(年齢計算ニ関スル法律#就学参照)
学齢と適切な就学年齢
学齢期が小中学校教育を受けるのに最適な年齢であるという保証はない。児童には発達の個人差があるし、また人によっては入院などの休学期間もあるので、個人によって学校教育を受けるべき年齢にも差があるはずである。こういった考え方は日本以外の各国では一般的であるが日本ではほとんどの場合、学齢期と小中学校の在学時期が重複している。
学齢に達した児童が学校の授業に適応できる程度まで成長していることを、「学齢成熟」と呼ぶ。ドイツなどでは小中学校での原級留置(留年)の原因は学齢成熟に達していない児童を小学校に入れることであるという考え方があり、小学校の就学年齢をある程度可変にして学校にうまく適応できるようにしている。
また、学齢を超過した人は教育を受けるのにふさわしくないという考え方も誤りである。実際、日本では学齢超過者たる中卒者の大部分が高校に進学し、また大学・大学院にも多くが進学している。このように実際に学齢を超過しても高校以上の学校に行く例が多いことからも、学齢期だけが「学びの時期」ではないことは理解できる。しかしながら学齢超過者は小中学校には通う必要はないという考え方(年齢主義)も根強く、基礎的な教育を受けられなかった人に対する教育が不十分な実態がある。
就学事務
正式には、小学校などの初等教育の課程に対する学齢(学校教育法第22条)と中学校などの前期中等教育の課程に対する学齢(学校教育法第39条)の2つがある。義務教育を実施することとあわせて保護者が小学校などの初等教育の課程に就学させなければならない子女(子供)は学齢児童(がくれいじどう)と称され(学校教育法第23条)、保護者が中学校などの前期中等教育の課程に就学させなければならない子女(子供)は学齢生徒(がくれいせいと)と称される(学校教育法第39条第2項)。
住民基本台帳に記載されている学齢期の子女(子供)は、市町村教育委員会によって学齢簿に記載される。そのため、日本に住所を有する子女(子供)の保護者には子女(子供)が学齢期に達する2月前までに市町村(特別区を含む)の教育委員会から学校の入学期日が通知される(学校教育法施行令第5条第1項)。また病弱、発育不完全その他やむを得ない事由によって市町村(特別区を含む)の教育委員会から就学猶予が認められた場合は、保護者は子女(子供)を就学させるのを翌学年度に持ち越すことができる。また就学免除が認められた場合は、保護者は就学させなくてもよい。
ドメスティックバイオレンスからの退避など、何らかの理由で住民登録がされていない児童でも学齢簿を編成して公立学校に就学することは可能とされる。また在日外国人についても学齢に達しても小学校に入学する必要はないが、なるべく入学できるように取り計らわれている。ただし外国人は学齢簿には記載されない。
学齢期の小中学校の児童生徒には通常は停学の措置ができないが、学齢期でない場合は可能である。また公立の小中学校でも、学齢期でなければ授業料を徴収することは可能である。なお、学齢期に専修学校一般課程や各種学校に在学することは問題ない。
学齢と在学年齢
学齢は義務教育(国民が子女に受けさせなければならない教育)を補完する概念であり小学校、中学校などの目的は学齢期の子女(子供)だけを入学させて教育することではない。しかし日本の小学校、中学校などに在学しているのはほとんどが学齢期の子女(子供)であるため学齢期を大きくかけ離れた人が小学校、中学校などに入学するのは実質的に難しい場合も多い(なお幼稚園、特別支援学校の幼稚部は幼児が対象なので小学校就学の始期に達するまでの人しか入園(入学)できない)。
高等学校などの後期中等教育の課程についての在学年齢は入学に際して実質的な年齢の下限があり(中学校卒業などが要件とされる)、各学校ごとに上限が定められている場合もあるものの法令上は「学齢」とは呼ばれない。しかし日本では国民の大多数が中学校などの前期中等教育の課程を修了した直後に高等学校などの後期中等教育の課程に進学するため、学齢期の延長ともいえる状況になっている。このため一部では満16歳から満18歳までについても「高校年齢」や「高校の学齢」と呼ばれる場合があり(ただし誤用である)、満16歳から満18歳までの時期を大きくかけ離れた人が高等学校などに入学することが小学校、中学校などと同様の理由で難しくなる場合もある。
日本において年齢と入学できる学校の関係は以下の一覧のとおりとなっているが以下の1の学校では2の学校に入れる年齢である人の新入学・転入学・編入学・在学などがきわめて少なく、また2の学校でも3の学校に入れる年齢である人の新入学・転入学・編入学・在学などが少ない(詳しくは、過年度生を参照のこと)。
学齢期以外の者の義務教育諸学校への在学
義務教育諸学校(小学校・中学校・中等教育学校前期課程・盲学校・聾学校・養護学校の小学部・中学部)に在学している者は、ほとんど(全学校種平均では約99.51%)が学齢期の者である。この理由としては、以下のものが挙げられる。
学齢未満者
学齢期に達していない者は、義務教育諸学校への入学は禁じられている。戦前にはこの規制は幾分緩やかだったため飛び入学のような形で早期に小学校に入学した例もある程度見受けられたが(河上肇など)、戦後は明確に禁止されている。近年、教育改革の議論が高まる中で就学時期を1年程度早めたり遅めたりすることが容易に可能となる制度にしようとする意見もあるが、就学時期を早める方については現時点では不可能である。
ただし、ごくまれな話であるが昭和20年代に自治体のミスで、学齢期に達しないうちに小学校に入学させてしまい、しばらく経った後にミスに気付いたという例があった。この場合は、杓子定規に学年を変更すると生徒への悪影響が大きいと考えて、やむを得ないものとしてそのまま進級させ、14歳で中学校を卒業させた。なお、この生徒は高校進学の際は中学校を卒業しているために高校入学資格があるとされ、14歳での高校入学は可能とされた(実際に進学したかは不明である)。
学齢超過者
学齢期を過ぎた者は義務教育諸学校に在学する必要はないが、在学は禁止されていない。1952年に伊丹市の照会に対し文部省は「一般に、学齢児童生徒以外の者が公立の義務教育学校への就学を願い出た場合には、教育委員会は、相当の年齢に達し、且つ学歴、学校の収容能力等の諸事情を考慮して適当と認められる者については、その就学を許可して差支えない。」と回答し、学齢超過者でも入学が可能な場合があるとの見解を示している。
例えば、中学校2年までは最低年齢で在学していたものの、1年間の原級留置(留年)をしたために卒業時には16歳であったというケースの場合、最後の1年間は学齢超過者として中学校に在学していたということになる。この場合、学齢期を終えた時点で、本人の意思により退学(除籍)することは自由であった。なお学齢期の者が在学中に学齢を超過することになり、本人・学校の両者の合意によって在学を継続する場合は、教育委員会の許可を受けずに継続在学可能であるが、学齢超過者が新たに入学しようとする場合は、公立学校においては教育委員会の許可を受ける必要がある。これは、小学校卒業直後に公立中学校に進学する場合も中学校への新入学扱いとなるために同様の扱いになり、小学校卒業時に学齢を超過している場合は、公立中学校に入学するときに改めて教育委員会の許可を受ける必要があることになる。日本では義務教育諸学校に在学している学齢超過者は5万6000人以上存在すると見られるが、これは義務教育諸学校の全在学者のうちの約0.49%であり、中学校などの前期中等教育の学校の全在学者のうちの約1.37%に当たる(過年度生を参照)。
ただし、学齢超過者は必ずしも義務教育諸学校への入学・在学が保障されているわけではない。夜間中学校などでは積極的に受け入れているものの、多くの中学校では入学を断られる場合も多い。多くの文献では、学齢超過者であっても義務教育未修了者(卒業証書を受け取っていない者)であれば、一般の中学校でも受け入れるべきであるとの見解を採っているが、実際には受け入れを拒否している教育委員会も多い(過年度生を参照)。また、夜間中学校であっても、既に中学校の卒業証書を受け取っていると入学が難しくなることが多いとされる。
近年は、養護学校の小学部・中学部などで、主に障害のため学齢期に就学免除を受けた学齢超過者を積極的に受け入れているケースもあり、以前には学習権を保障されなかった人への補償を行なっている形である。