■ 『可変バルブ機構』の解説
可変バルブ機構(かへんバルブきこう)は、4サイクルレシプロエンジンにおいて、通常は固定されている吸排気バルブの開閉タイミングやリフト量を可変とする機構。バルブを全て閉じて、特定の気筒の動きを休止させるものも含まれる。
概要
4サイクルレシプロエンジンにおいて効率の良い吸排気を行うには、ピストンの移動速度(エンジンの回転速度)と吸排気の流速に合わせて、バルブの開閉動作を制御する必要がある。
- 通常、吸気行程ではピストンが下降を始める少し前に吸気バルブを開き始めるが、その際、最も効率の良い吸気流速を得るためのバルブタイミングは、ピストン速度に応じて変化する。さらに、ピストンによる吸気行程が終わり圧縮行程に入っても、吸気流速が十分に高い場合は吸気の重量により慣性力が働くため、吸気バルブを遅く閉じた方が充填効率が上がる領域も存在する。
- 排気行程についてもピストンが下降しきる少し前に排気バルブを開き始めるが、特に高回転域では燃焼圧力によってピストンが押し下げられている途中の段階で排気バルブを開き始めた方が、排気行程のピストン上昇や次行程の吸気を阻害せず効率が良くなる。また、排気行程が終わりピストンが降下し始めて吸気行程に移っても、排気の流速に応じて排気バルブを開いていた方が効率が良い領域もある。
従来は、上記のように回転数や負荷によって最適なバルブタイミングおよびリフト量が変化するのに対して、それらをある一定の負荷領域で最適となるように固定し、それ以外の領域での効率を犠牲とせざるを得なかった。それを、バルブタイミングおよびリフト量を可変とすることによって、負荷領域に応じて常にバルブ動作が最適となるように変化させて行くのが可変バルブタイミング機構である。
実際の機構には、カムの回転角に位相を与えるもの、形状の異なるカムを複数用意して切り替えるもの、これら2つを組み合わせたものなどが存在する。
エンジン特性を変える別の方法としては、吸排気の気体流速を変える可変インテークマニホールドなどがあり、これに可変バルブ機構を使って吸気バルブ・排気バルブのそれぞれの片側を閉じ(吸気、排気バルブが2個ずつの4バルブエンジンの場合)、気体流速を変化させる。
吸排気バルブを全て閉じ、稼動するシリンダーの数を変化させる気筒休止エンジンにも可変バルブ機構が用いられている。
1カム・タイプ(カム形状固定型)
- 位相変化型(タイミング可変・リフト固定)
- 現在最も普及している可変バルブ機構。クランクシャフトに対してカムシャフトを進角・遅角させることで、バルブタイミングを変化させる。リフト量は変化しない。主にバルブオーバーラップを最適にコントロールするために使用される。作動方式には潤滑系のオイル圧力を使用するものと電力(磁力)によるものがある。吸気側のみを可変としたものが主流であるが、中~大排気量エンジンを中心に排気側にも普及しつつある。
- バルブ片閉じ型(タイミング固定・リフト可変(2バルブのうち片側のみ))
- 吸気2個、排気2個の4バルブエンジンにおいて、吸気側、排気側のそれぞれの片側を閉じるか、もしくはほとんど開かない状態とする。
複数カム切り替えタイプ(カム形状可変型)
- カム切り替え型(タイミング・リフト可変)
- 低回転、高回転で2種類のカムを使い分ける。
- カム切り替え・位相変化型(タイミング・リフト可変)
- 位相変化型とカム切り替え型の複合タイプである。
- カム切り替え・バルブ片閉じ型(タイミング・リフト可変)
- 低回転時に4バルブエンジンにおける片側のバルブを閉じ、高回転では両バルブを開き、さらに2種類のカムを使い分ける。
- 短所 - 出力に段差ができてしまう。
- 採用例 - ホンダの3ステージVTEC、三菱のシリウスDASH3×2に採用された。
- カム切り替え・気筒休止型(タイミング・リフト可変)
- 低負荷時に気筒停止し、高回転ではカムを切り替える。
- 長所 - 気筒停止することにより燃費を改善させられるほか、ハイブリッドカーではエネルギー回生効率が上がる。さらにカムを切り替えることにより、高回転での出力特性にも優れる。
- 短所 - 2種類のカムを切り替えるだけなので、出力に段差が出る。
- 採用例 - 三菱のMIVEC-MD、ホンダのシビックハイブリッド用VTECなどに採用。
1カム・タイプ(レバー比・カム形状可変型)
- バルブリフト連続可変・位相変化型(タイミング可変・リフト可変)
- ロッカーアームのレバー比を変化させることで、バルブリフト・作用角を連続的に変化させる。リフトを変えると自動的に位相(中心角)が変化するタイプ(三菱MIVEC)と、可変バルブリフト機構とは別に可変バルブタイミング機構を組み合わせることで最適なバルブタイミングを実現するタイプとがある。
歴史
最初の可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing、略称VVT)の実験はGMによって行われた。排気ガスを減少させるために吸気バルブによってスロットル制御を行うことが目的で、これは低負荷時にバルブリフトを減少させて吸気速度を高く保ち、それによる混合気の細分化を狙っていた。しかし低バルブリフトにおける制御には課題も多く、最終的にGMはプロジェクトを放棄した。
最初の実用的なバルブリフトを変化させる可変バルブタイミング機構はフィアットによって開発された。Giovanni Torazzaにより1970年代に開発されたシステムは、カムフォロワーの支点を油圧で変えるものだった。油圧はエンジンの回転数と吸気圧によって変えられた。
各社の名称
- VTEC、i-VTEC、VTEC-E - 本田技研工業における名称。各種のバリエーションが存在する。
- MIVEC - 三菱自動車工業における総称。各種のバリエーションが存在するが、記号などでの分類表記はされて無い。
- AVCS、i-AVLS - 富士重工業における名称。前者はActive Valve Control Systemの、後者はi Active Valve Lift Systemの略。
- NVCS、CVTC、eVTC、NEO VVL、VVEL - 日産自動車における名称。
- VVT-i、VVTL-i、VVT-iE、VALVEMATIC - トヨタ自動車における名称。
- VVT、VC - スズキにおける名称。前者は主に自動車、後者はオートバイに使用される。
- DVVT - ダイハツ工業における名称。
- S-VT - マツダにおける名称。Sequential Valve Timingの略。
- バリオカム、バリオカムプラス - ポルシェにおける名称。バリオカムは位相変化、バリオカムプラスはバリオカムに可変リフトを追加したもの。
- VANOS、バルブトロニック - BMWにおける名称。VANOSは位相変化機構であり、バルブトロニックは可変リフト機構でVANOSと同時に使用される。
- VTC、VEL - 日立製作所(旧ユニシア、日立により吸収)における名称。前者は連続位相可変型で、ホンダ、日産に採用される。後者はVVELとして日産に採用された。
■ 『可変バルブ機構』に 関連する人気アイテム
可変バルブ機構―ジキルとハイドのメカニズム | ||
エンジンの予備知識がなくても読める(参考になった人 3/3 人)
エンジンがだいたいどのように動いているのか、といったことから書いてあります。しかし、バルブ機構に関する事柄は広く浅くといった感じであまり具体的には書いてありません。平易な説明で読みやすい本ですがマニアックな知識を求めている方には少し物足りないかもしれません。 |
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■ 『HKS』の解説 by はてなキーワード
社名の由来は"H"は長谷川(現社長)、"K"は北川(現専務)、"S"は創業時に出資協力をしたシグマ・オートモーティブの頭文字から取られている。
日本で始めてボルトオンターボを開発・販売し、日本で最初に市販車で時速300kmオーバーを達成したメーカーである。主にエアクリーナーや吸気パイプ、ハイカムや可変バルブタイミング機構、タービンやブローオフバルブ、ブーストコントローラーやチューニングCPU、インタークーラーやオイルクーラー、触媒やマフラーといったエンジン関係のパーツを得意とする。
GT-Rのハイパワーチューンにおいては、必ずと言って良いほどHKS製商品が使われており、またメタルキャタライザーはGT-Rを始めインプレッサ、ランエボといったハイパワーターボ車での定番チューニングの一つでもある。
ハードチューンやフルチューンを語る上では避けて通れない存在であり、ドラッグレースや最高速チャレンジ、グリップランやドリフトといった分野での活躍や、そのために開発された数々の過激なチューニングマシン(ドラッグスープラ、CT230Rなど)ゆえ「硬派なチューニングメーカー」の印象が強い。
だが、実際には車検対応の合法チューニングの草分け的存在でもあり、純正交換エアフィルターや保安基準対応マフラーといったライトチューニング関連のパーツも多数取り扱っており、幅広いユーザー層を持っている。