■ 『ポツダム命令』の解説
ポツダム命令(ポツダムめいれい)とは、いわゆるポツダム緊急勅令に基づいて発せられた一群の命令の総称である。いわゆるポツダム勅令やポツダム政令は、ポツダム命令の一種である。
ポツダム緊急勅令
ポツダム緊急勅令とは、大日本帝国憲法第8条第1項の「法律に代わる勅令」に関する規定に基づき昭和20年(1945年)9月20日に公布・即日施行された「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件(昭和20年勅令第542号)の通称である。この緊急勅令では、第二次世界大戦後、連合国軍の占領下にあった日本で、連合国軍最高司令官の発する要求事項の実施につき特に必要がある場合には、法律事項(帝国議会がその成立に関与すべきことになる)であっても、政府が命令で定められる(罰則も可)とした。
連合国軍による日本占領は、日本の政府機関を温存・利用する間接統治によったが、連合国軍最高司令官の要求事項は指令・覚書の形で政府に伝えられ、政府は命令の形にして国民と政府機関に伝えた。同日制定された昭和二十年勅令第五百四十二号(「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件)施行ニ関スル件(昭和20年勅令第543号)によれば、その形式は勅令(いわゆるポツダム勅令)・閣令・省令の3種とされ、必要な罰則も定められるとしていた。昭和22年(1947年)5月3日の日本国憲法施行以後は政令(いわゆるポツダム政令)・総理府令・法務府令と省令の形式に変更された。
ポツダム命令の多くは、昭和27年(1952年)4月28日の日本国との平和条約(いわゆるサンフランシスコ講和条約)の発効に伴い、ポツダム緊急勅令とともに、または暫定措置として発効の日から180日間限りで廃止されたが、新たに代替の法律が定められたものや法律としての効力を有するとの存続措置がとられたものもある。
なお、大日本帝国憲法下においては、憲法第8条に基づく勅令(緊急勅令=法律に代わる勅令)と、第9条に基づく勅令(普通の勅令)があった。いずれも法令番号としては単に「勅令第何号」とされたため、通常、どちらであるのか見分けるには公布時の上諭まで参照しなければ判別できないが、このポツダム緊急勅令は前者であり、また、公布後に当時の帝国議会の承諾(1945年12月8日貴族院、同18日衆議院、ともに全会一致)を得ているため、その法令番号区分にかかわらず、旧憲法下の法律としての効力を有するものとされている(参照)。
「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件
(昭和20年勅令第542号)
- 政府ハ「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ聯合国最高司令官ノ為ス要求ニ係ル事項ヲ実施スル為特ニ必要アル場合ニ於テハ命令ヲ以テ所要ノ定ヲ為シ及必要ナル罰則ヲ設クルコトヲ得
- 附 則
- 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和二十年勅令第五百四十二号施行ニ関スル件
(昭和20年勅令第543号)
- 昭和二十年勅令第五百四十二号ニ於テ命令トハ勅令、閣令又ハ省令トス
- 前項ノ閣令及省令ニ規定スルコトヲ得ル罰ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮、五千円以下ノ罰金、科料及拘留トス
- 附 則
- 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律
(昭和27年法律第81号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号。以下「勅令第五百四十二号」という。)は、廃止する。
- 勅令第五百四十二号に基く命令は、別に法律で廃止又は存続に関する措置がなされない場合においては、この法律施行の日から起算して百八十日間に限り、法律としての効力を有するものとする。
- この法律は、勅令第五百四十二号に基く命令により法律若しくは命令を廃止し、又はこれらの一部を改正した効果に影響を及ぼすものではない。
- 附 則
- この法律は、日本国との平和条約の最初の効力発生の日から施行する。
- この法律施行のための経過的規定その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件施行に関する件を廃止する政令
(昭和27年政令第120号)
- 内閣は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)の廃止に伴い、この政令を制定する。
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件施行に関する件(昭和二十年勅令第五百四十三号)は、廃止する。
- 附 則
- この政令は、公布の日から施行する。
ポツダム命令の役割
ポツダム命令により定められた事項は多岐にわたる。占領初期には「非軍事化・民主化」政策の推進という役割を果たしたが、占領後期には占領政策の転換に伴い、労働運動や社会主義運動の取締りの役割を果たして行くようになる。「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件(昭和20年勅令第730号)」や「公職に関する就職禁止、退官、退職等に関する勅令(昭和22年勅令第1号)」(いわゆる公職追放令)は前者の、「団体等規正令(昭和24年政令第64号)」や「昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令第201号)」(いわゆる政令201号)は後者の例である。
主な現行「ポツダム命令」
現在もいくつかのポツダム命令が、法律・政令・省令としての効力を持って存続している。これらは、現に法律・政令・省令のいずれかの効力を有しているかにかかわらず、法令番号は制定時のものがそのまま付されることになっている(つまり法律としての効力をもっていても政令第○○号のように表記する)ので注意が必要となる。以下は、法律としての効力を持つものである。
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第43号)によるもの
- 明治三十九年法律第二十四号官国幣社経費に関する法律廃止等の件(昭和21年勅令第71号)附則第6項
- 軍需金融等特別措置法等の一部を改正する勅令(昭和21年勅令第283号)附則第2項及び第3項
- 閉鎖機関令(昭和22年勅令第74号)
- 旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令(昭和24年政令第291号)
- 国外居住外国人等に対する債務の弁済のためにする供託の特例に関する政令(昭和25年政令第22号)
- 閉鎖機関の引当財産の管理に関する政令(昭和25年政令第369号) ※存続措置当時の題名は「特定在外活動閉鎖機関等の引当財産の管理に関する政令」
- 特別調達資金設置令(昭和26年政令第205号)
- 会社の解散の制限等に関する勅令を廃止する政令(昭和26年政令第247号)附則第8項
- 持株会社整理委員会令の廃止に関する政令(昭和26年政令第261号)
- 外貨債処理法等の廃止及び外国為替管理法等中改正の件(昭和20年大蔵省令第101号)附則第2項及び第4項
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く中国銀行(中華民国法人)大阪支店の業務及び財産の管理に関する省令を廃止する省令(昭和24年大蔵省令第10号)附則第3項及び第4項
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く運輸省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第72号)によるもの
- 航海の制限等に関する件(昭和20年運輸省令第40号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第86号)によるもの
- 明治三十九年法律第二十四号官国幣社経費に関する法律廃止等の件(昭和21年勅令第71号)附則第3項
- 学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く経済安定本部関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第88号)によるもの
- 物価統制令(昭和21年勅令第118号)
- 外国政府の不動産に関する権利の取得に関する政令(昭和24年政令第311号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く連合国財産及びドイツ財産関係関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第95号)によるもの
- 連合国財産上の家屋等の譲渡等に関する政令(昭和23年政令第298号)
- 連合国財産である株式の回復に関する政令(昭和24年政令第310号)
- ドイツ財産管理令(昭和25年政令第252号)
- 連合国財産の返還等に関する政令(昭和26年政令第6号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第120号)によるもの
- 死産の届出に関する規程(昭和21年厚生省令第42号)
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第126号)によるもの
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号) ※存続措置当時の題名は「出入国管理令」
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第137号)によるもの
- 政治犯人等の資格回復に関する件(昭和20年勅令第730号)
- 沖縄関係事務整理に伴う戸籍、恩給等の特別措置に関する政令(昭和23年政令第306号)
- 会社等臨時措置法等を廃止する政令(昭和23年政令第402号)附則第5条、第7条及び第9条
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■ 『日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律』の解説 by はてなキーワード
日本国憲法の効力による大日本帝国憲法(明治憲法)時の法律・法令・の効力を明記した法律。
効力・有効
種類・法律
改正・あり
昭和二十二年法律第七十二号(日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律)
第一条 日本国憲法 施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以て規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。
第一条の二 前条の規定は、昭和二十年勅令第五百四十二号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)に基き発せられた命令の効力に影響を及ぼすものではない。
第一条の三 行政官庁に関する従来の命令の規定で、法律を以て規定すべき事項を規定するものは、昭和二十三年国家行政組織に関する法律が制定施行される日の前日まで、法律と同一の効力を有するものとする。
第一条の四 左に掲げる法令は、国会の議決により法律に改められたものとする。
墓地及埋葬取締規則に違背する者処分方(明治十七年太政官達第八十二号)
家畜ニ応用スル細菌学的予防治療品及診断品取締規則(昭和十五年農林省令第八十八号)
医薬品等の封緘及び検査証明の取締に関する件(昭和十八年厚生省令第四十二号)
北海道庁営林現業員共済組合令(昭和十七年勅令第六百八十六号)
○2 前項に掲げる法令の効力は、暫定的のものとし、昭和二十三年七月十五日までに必要な改廃の措置をとらなければならない。
○3 第一項に掲げる法令は、昭和二十三年七月十五日までに法律として制定され、又は廃止されない限り、同月十六日以後その効力を失う。
第二条 他の法律(前条の規定により法律と同一の効力を有する命令の規定を含む。)中「勅令」とあるのは、「政令」と読み替えるものとする。
○2 前項の規定は、内閣その他行政機関に対し、日本国憲法 が認めていない場合において命令を発する権限を付与したものと解釈されてはならない。
明治二十三年法律第八十四号(命令の条項違犯に関する罰則に関する法律)
明治三十八年法律第六十二号(戸主でない者が爵位を授けられた場合に関する法律)
明治四十三年法律第三十九号(皇族から臣籍に入つた者及び婚嫁によつて臣籍から出て皇族になつた者の戸籍に関する法律)
昭和二年法律第五十一号(王公族から内地の家に入つた者及び内地の家を去り王公家に入つた者の戸籍等に関する法律)
明治五年太政官布告第二十九号(世襲の卒士族に編入伺出方に関する件)
明治五年太政官布告第四十四号(郷士士族に編入伺出方に関する件)
明治七年太政官布告第七十三号(華士族分家者の平民籍編入に関する件)
明治十三年太政官布告第三号(士族戸主死亡後に於ける族称廃絶に関する件)
附 則
